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生薬の知識は、薬剤の薬効を知る上に大切である。
麻黄、地黄、大黄、附子、甘草を含む処方は、副作用に注意する必要がある。
生薬 | 薬効 | 備考 |
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麻黄(まおう) | 発汗、気管支拡張作用、去痰 | エフェドラの地上茎 |
地黄(じおう) | 滋養強壮、血液凝固抑制、 | カイケイジオウの根 |
大黄(だいおう) | 緩下作用、代謝改善作用 | タデ科レウムの根 |
附子(ぶし)
鎮痛、利尿作用
附子(ぶし) | 新陳代謝賦活作用、鎮痛、利尿作用 | トリカブトの塊根。神経毒、β刺激、強心作用がある。 |
葛根(かっこん)
首背中のこわばりを治す。
葛根(かっこん) | 解熱作用、首背中のこわばりを治す。 | クズの根 |
甘草(かんぞう) | 健胃解毒作用、 |
精神不穏などの急迫症状を和らげる。 |
カンゾウの根 |
桂皮(けいひ) |
桂枝(けいし) | 健胃、血行促進、 | クスノキの樹皮 |
石膏(せっこう) | 熱をとり潤す作用 |
含水硫酸カルシウム。慢性皮膚疾患に頻用される。 |
当帰(とうき) |
川芎(せんきゅう) |
血行促進、月経を整える作用、免疫調節作用 |
トウキの根、副作用はアレルギー反応、胃腸障害 |
人参(にんじん) |
滋養強壮作用、抗ストレス作用 |
オタネニンジンの根。主成分はサポニン(ginsenosides) |
柴胡(さいこ) |
リンパ球の機能調節、代謝調節作用 |
ミシマサイコの根。主成分はサポニン(saikosaponins)、副作用はアレルギー反応 |
黄芩(おうごん) |
柴胡(さいこ)
リンパ球の機能調節、
代謝調節作用、
ミシマサイコの根
主成分はサポニン(saikosaponins)
副作用はアレルギー反応
黄芩(おうごん)
免疫調節作用、
健胃、解熱作用
コガネバナの根
副作用はアレルギー反応
芍薬(しゃくやく)
免疫調節作用、健胃、解熱作用 |
コガネバナの根。副作用はアレルギー反応 | ||
芍薬(しゃくやく) | 鎮痙、鎮痛作用 | シャクヤクの根 |
茯苓(ぶくりょう)
消化機能を高める。
茯苓(ぶくりょう) | 利尿、強心作用、消化機能を高める。 | マツホドの菌核 |
6.漢方製剤の副作用
慢性肝炎治療において、小柴胡湯は薬剤性間質性肺炎を引き起こすことがある。特にインターフェロンと併用すると発生頻度が高くなる(禁忌)。発熱、乾燥性咳嗽、呼吸困難などが現れたら間質性肺炎を疑う。
麻黄は、ephedrineを主成分にしており、中枢および交感神経を刺激し、副作用を起こしやすい。
甘草は、グリチルリチン酸を含み、腎尿細管でのK排泄を促進し、低K血症や偽アルドステロン症を引き起こす。
山梔子(さんしし)は、主成分のゲニポシドが腸内細菌により分解されゲニピンとなり、腸間膜静脈硬化症を引き起こす。
それぞれの薬物が、アレルギー皮膚炎や薬剤性肝炎を引き起こすこともある。他剤との併用による副作用の増強がある(例えば麻黄と交感神経刺激薬、大黄と下剤など)。
7.用語解説
気 | 気は生命のエネルギー。気虚、気鬱、気逆がある。 |
血 | 血は体内の血液。血虚(栄養不足)と瘀血(おけつ、血の巡りが悪い)がある。 |
水 | 水は体液。水毒(水の分布が悪い) |
実 | 充実した余った状態で、患部に気血が動員されている状態。 |
虚 |
空虚で、患部に気血が乏しい状態。足らない状態。 | |
陽 | 活動性で熱性の反応を示す状態。 |
陰 | 非活動性、寒性の反応を示す状態。 |
表・裏 |
半表半裏は中間(口から横隔膜まで)を表す。
表は皮膚や筋肉を、裏は消化器周辺を示す。半表半裏は中間(口から横隔膜まで)を表す。 |
六病位 |
病気の経過を6段階で表す:太陽病、陽明病、少陽病、太陰病、少陰病、厥陰病。 |
五臓論 |
古代中国の五行論(自然界は五つの要素、木・火・土・金・水からできており、互いに制御を受けている)を人体に当てはめ、肝・胆=木、心・小腸=火、脾(膵)・胃=土、肺・大腸=金、腎・膀胱=水、が相生および相剋関係にある。 |
脾(膵)・胃=土、肺・大腸=金、腎・膀胱=水、が相生および相剋関係にある。
三大古典 |
漢方医学のバイブル
紀元前から3世紀に編纂された「傷寒論」、「黄帝内経」、「神農本草経」が漢方医学のバイブル。 |
参考図書:「入門漢方医学」(日本東洋医学学術教育委員会編、南江堂)、「漢方診療のレッスン」(花輪壽彦著、金原出版)
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