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麻薬性鎮痛薬は、アヘンに含まれるモルヒネやコデインに加えて、これらの構造類似薬も含まれる。麻薬性鎮痛薬は、睡眠や意識消失なしに、最強の鎮痛作用を示すが、多幸感などを生じ耐性や依存性が引き起こされる。最近では、末期癌患者の鎮痛のために積極的に用いられている。

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オピオイド受容体には、μ、κδの古典的な3種類のサブタイプが知られている。鎮痛に関与するのは主にμ、次いでκ受容体である。さらに、δ受容体のクローニングの過程で、これらのオピオイド受容体とよく似た構造を持つ第4のオピオイド受容体であるノシセプチン受容体もクローニングされ、内因性アゴニストであるノシセプチンも発見された。しかし、その生理的役割や臨床的意義は未だ不明である。

受容体

局在

内因性ペプチド

生理機能

μ

中脳水道周囲灰白質、内側視床

エンドモルフィン(endomorphin), β-エンドルフィン(β-endorphin)

鎮痛、縮瞳、腸管運動減少、多幸感、依存、呼吸抑制

δ

脊髄、辺縁系

エンケファリン(enkephalin)

鎮痛、血圧低下

κ

脊髄

ダイノルフィン(dynorphin)

不快感、精神異常作用、μ-受容体の鎮痛作用に拮抗(脳幹)

nociceptin (N)

脊髄、辺縁系、視床 

ノシセプチン/オルファニンFQ(nociceptin/orphanin FQ)

抗不安作用、痛覚過敏

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WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002年)

緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティー・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を改善するアプローチである。

緩和ケアでは、痛みを取り除くことを第一に考える。WHOは、「痛みに対応しない医師は倫理的に許されない」と宣言している。痛みは、取り除くことができる症状であり、痛みのコントロールでは、麻薬性鎮痛薬(「医療用麻薬」とよばれる)が重要である。医療用麻薬は、がんの痛みに極めて有効で、痛みにあわせて薬を増やすことで痛みを取り除くことができる。医療用麻薬は、痛みがある状態で使用すると中毒にはならないとされている。副作用に対しても、さまざまな薬や対処法が開発されているので、使用をためらう必要はない。

痛みの治療は薬物療法と非薬物療法の組み合わせが必要となるが、鎮痛薬(下表)の使用が主役となる。痛みの強さによる鎮痛薬の選択ならびに鎮痛薬の段階的な使用法は、治療にあたって守るべき「鎮痛薬使用の5原則」(● 経口的に(by mouth)● 時刻を決めて規則正しく(by the clock)● 除痛ラダーにそって効力の順に(by the ladder)● 患者ごとの個別的な量で(for the individual)● その上で細かい配慮を(with attention to detail))とWHO方式三段階鎮痛法「三段階除痛ラダー」(下図)に従う。

具体的には、第一段階:軽度の痛みに対し非オピオイド鎮痛薬(NSAIDsやアセトアミノフェン)を開始する。第二段階:軽度から中等度の痛みに対し、弱オピオイド(コデインやトラマドール)を追加する。第三段階:中等度から高度の痛みに対し、弱オピオイドから強オピオイド(モルヒネ・フェンタニル・オキシコドン・タペンタドール)に切り替える。この4種類のオピオイドで管理が困難な症例にメサドンを考慮する(日本ペインクリニック学会のサイトより転載)。


WHO方式がん疼痛治療法の鎮痛薬リスト日本緩和医療学会サイトから転載して改変)

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三段階除痛ラダー(日本緩和医療学会サイトから転載)

話題

1994-1995年にかけて、オピオイド受容体に類似した未知の受容体がクローニングされ、そのリガンドも報告された。リガンドは、17ヶのアミノ酸からなるペプチドで、痛みに対して過敏反応を引き起こすので、nociceptinと命名された。最近、nociceptin receptor の拮抗薬(J-113397)が開発され、これが、炎症を引き起こすフォルマリンやカラゲニンに対して鎮痛作用を持つことや、forskolin によるcAMP産生を抑制することが報告された。(S. Ozaki, Eur. J. Pharmacol., 387, R17, 2000、論文をみる)
5-HT4(a)受容体は、脳幹部の呼吸リズム生成ニューロン(Pre-Boetzinger complex)に多く存在し、μ受容体と共存することが見出された。5-HT4作用薬のBIMU8を投与すると呼吸(respiratory minute volume)が増加し、拮抗薬のGR113808の投与で抑えられた。Fentanyl による呼吸抑制は、BIMU8で回復するが、鎮痛作用は変化がなかった。呼吸リズム調節は、5-HT4受容体-cAMP系を介していると考えられる。(T.Manzke et al., Science, 301, 226, 2003、論文をみる

関連サイトの紹介 

1、日本緩和医療学会 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 薬理学的知識 オピオイドとは何か:薬理学的特徴 各オピオイドの薬理学的特徴 など他にも重要な記載が多い。

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