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1、痛風とは

痛風(gout)は、人口の約0.3%に見られ、40才以上の男性に多い。尿酸は、生体内では主にRNAを構成するプリン塩基(アデニン、グアニン)の分解により生じ、その血漿中での飽和度は、約7mg/dLである。血清尿酸値が、7.0mg/dL以上を高尿酸血症という。高尿酸血症は、尿酸の生産過剰、尿酸排泄の低下、あるいはその合併によって生じる。高尿酸血症が痛風関節炎、痛風結節、腎障害、尿路結石などの原因であることは以前から知られていたが、動脈硬化性疾患の原因になる可能性も報告されている。

痛風発作は、足親指の関節滑膜にできた尿酸ナトリウムの微小結晶が関節腔に剥がれ落ち、これを貪食細胞が貧食し、IL-1βを中心としたサイトカインの遊離により、好中球が集積し、種々のサイトカインやケモカインがさらに放出されるという急性自己免疫性炎症により生じる。また、乳酸も産生されpHが低下し、さらなる尿酸の析出という悪循環が生じる。再発を繰り返すと、腎障害や尿路結石を生じる。

ヒトが痛風になるのは、尿酸を酸化する酵素(uricase)がない、尿酸が水に溶けにくい、腎臓で尿酸は90%が再吸収されることなどによる。治療は、「6-7-8のルール」に従い、血清尿酸値7.0mg/dL以上を高尿酸血症と定義し、治療を開始する尿酸値を8.0mg/dL以上とし、尿酸の降下目標値を6.0mg/dL以下とする。

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分類

薬物

作用点と副作用

急性発作治療薬

コルヒチン(colchicin)

痛風による炎症を選択的に抑制する。微小管に結合し、顆粒球の炎症部への移動、炎症関連蛋白質の遊離抑制。副作用は、胃腸障害。

non steroidal anti-
inflammatory drugs
(NSAID)

インドメタシン(indomethacin)などの大量投与は急性疼痛発作に有効である。

高尿酸血症治療薬

尿酸排泄促進薬

プロベネシド(probenecid)

プロベネシドは近位尿細管から分泌され、尿細管における尿酸の再吸収を競合的に阻害する。URAT1というトランスポーターを阻害する。

ベンズブロマロン(benzbromarone)

尿酸の尿細管での再吸収を選択的に抑制し、尿酸排泄の促進。血中尿酸低下作用は著しく、投与初期に痛風を誘発することがある。肝障害に注意が必要。

尿酸生成抑制薬

アロプリノール(allopurinol)

プリン塩基類似体である。ヒポキサンチン(hypoxanthine)から尿酸(uric acid)への代謝を触媒する酵素 キサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase)を阻害し、尿酸産生を抑える。

フェブキソスタット(febuxostat)非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害薬である。アロプリノールは腎から排泄されるが、フェブキソスタットは胆汁排泄型である。そのため、アロプリノールlが使えない腎不全の患者にも使える。副作用は、肝機能障害と過敏症。心血管疾患発現のリスクはアロプリノールよりも高い(論文をみる)・



allopurinol

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最近、尿酸のトランスポーター(URAT1)が同定された。腎臓の近位尿細管上皮に特異的に発現し、urate-anion交換反応をしている。anionは、無機anion(Cl-)よりも有機anion(NaNO3)の方が、尿酸取り込み刺激効果が強い。benzbromaroneが最も阻害作用が強く、losartanはprobencidと同程度の阻害活性を持つ。URAT1の欠損による腎性低尿酸血症の症例も示された。(A.Enomoto et al., Nature, 417, 447, 2002、論文をみる

人類で尿酸値が高いのは、尿酸が抗酸化剤として老化防止に役立っていると考えられている。Parkinson病(PD)は、ドパミンニューロンの酸化ストレスと関係している。そこで、Harvard大学のグループが、高尿酸血症がPD発症のリスクを低下させるかどうかを調べた。男性18000人についてのコーホート研究から、2000人がPDと診断された。尿酸値は、対照群は6.1mg/dlで、PD群では5.7mg/dlであった。尿酸値を4つの群に分けて調べたところ、尿酸値の一番低い群と一番高い群とのPD発症の比率は2.3-5.8であった。尿酸値を高めるとにより、PDのリスクを減らしたり、進行を遅らせることができるかも知れないと報告している。(M.G.Weisskopf et al., Amer. J.Epidemiol., 166, 561, 2007、論文をみる

高血圧の74%が痛風を持っているので、ボストン大のグループは、新しく痛風になった約25,000人について、降圧薬との関連性を、英国のgeneral practice databaseを用いて調べた。降圧薬のうち、Ca拮抗薬とlosartanが有意に痛風の発作を抑えた。また、薬物の使用期間の長い方が痛風の発作率が低下した。他の降圧薬(利尿薬、β遮断薬、ACE阻害薬、losartan以外のARB)は、逆に痛風の発作を増加させた。この結果は、痛風のリスクのある高血圧患者への降圧薬の選択の助けになるだろう。(H.K.Choi et al, BMJ, 344, d8190, 2012、論文をみる

痛風と重大な心血管系の併存疾患を有する患者において,フェブキソスタットは,心血管系有害事象の発現率に関してアロプリノールに対し非劣性を示した.全死因死亡率と心血管死亡率は,フェブキソスタット群のほうがアロプリノール群よりも高かった。(N Engl J Med 2018; 378:1200-1210、論文をみる

関連サイトの紹介

1、東京女子医科大学 膠原病痛風リウマチセンター 痛風の治療
2、日本医療機能評価機構 尿酸降下薬の種類と選択

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