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漢方薬の処方は、患者の「証」を考慮して行われるので、「証」を理解することが大切である。「証」は漢方医学的診断の根拠となる概念であり、「証」に従って漢方薬の選択がなされる。「証」とは、患者が現時点で呈している病状を、陰陽・虚実・気血水などの漢方医学のカテゴリーで総合的にとらえた診断であり、治療の指示であると定義されている。従って、漢方医学の診断は、病態の把握と治療薬(方剤)が連結しているという特徴がある。(図)


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病気の進展を考える上で、六病位(ステージ分類)が用いられる。また、病気の原因を考える上で、「五臓六腑」という考えも用いられる。すなわち漢方医学では、疾患を、西洋医学の一病一因論ではなく、個体全体からみる考え方(心身一如)をする。

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生体は、疾患に対して、これを修復するために様々な反応を示す。漢方では、「陰陽」、「虚実」、「表裏」、「寒熱」という基準(八綱弁証)を用いて、「証」を表し、漢方薬を選択する。

下図に、「陰陽」、「虚実」、「寒熱」の組み合わせによる「証」と漢方薬の選択例を示す。それぞれの薬剤は、原点(中庸、正常状態)に向かってのベクトル(方位)を持っている。ある「証」に対して、薬剤のもつベクトルを理解することが重要である。いま、高齢で肝硬変の患者A(右図、陽虚証、青●)に小柴胡湯を投与すると悪化(青矢印) するので、この場合は、補中益気湯を用いる。


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さらに、病態把握法として、次の方法も使用される。

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風邪に用いられる漢方は、主として発汗剤と清熱剤である。対症療法(標治)であり、「証」の診断には、丁寧な観察と修練が必要である。

表寒証:ぞくぞくする悪寒。 表熱証:熱感や赤い顔あるいは咽頭の発赤。
半表半裏の熱証:口苦や咳嗽、胸脇苦満。 裏熱証:腹満や便秘あるいは下痢
裏寒証:全身倦怠や下痢。
 
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葛根湯(カッコントウ)には、葛根(解熱)、麻黄(発汗、鎮咳)、生姜、大棗、桂皮(発汗)、芍薬(鎮痙、鎮痛)、甘草(急迫症状を和らげる)が含まれている。表寒証の薬剤の中からどれを選ぶかは、実虚などの証で決める。

小柴胡湯(ショウサイコトウには、柴胡(内臓の熱を取る)、黄芩(おうごん)、半夏、生姜、人参、大棗、甘草が含まれている。生姜、大棗、甘草のセットは、胃薬である。

麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)には、麻黄(気管支拡張)、杏仁(咳止め)、甘草、石膏(解熱)が含まれている。

麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)には、麻黄、附子(新陳代謝を賦活)、細辛(体を温める)が含まれている。

これらの薬剤の持つベクトルにより、病態を正常状態(中庸)持って行くのがねらいである(図)。
薬剤の成分から判断すると、かなり合理的に処方が行われているのが理解できる。
しかし、西洋医学の風邪薬に対する解熱剤、抗ヒスタミン、抗生物質のようなピンポイント治療とは異なる。

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