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1、疼痛発現機構

痛みを誘発する刺激は組織の損傷をひきおこすので、侵害刺激(noxious stimulus)という。

侵害刺激→組織障害→発痛物質(bradykinin、prostaglandins, serotonin, histamineなど)→自由神経終末→→痛覚伝導路

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COXには、COX-1とCOX-2というアイソザイムがあり、COX-2は炎症刺激により発現が誘導される。COX-1は構成的に発現している。NSAIDsの主な副作用である胃腸障害は、胃粘膜におけるCOX-1阻害によって粘膜細胞保護効果をもつPGI2、PGE2などの減少によると考えられている。特異的COX-2阻害薬(セレコキシブ、メロキシカムなど)以外のNSAIDsはCOX-1とCOX-2の両方を阻害する。

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3)臨床適応と注意点

副腎ステロイドのよる治療は、ホルモン分泌不全による補充療法以外は、抗炎症作用と免疫抑制作用を目的として用いられることがほとんどで、あくまでも対症療法であり、原因療法ではない。抗炎症作用発現には、mRNA合成、タンパク質合成が必要であり、少なくとも 1-2 時間が必要である。 

突発性血小板減少性紫斑病、ネフローゼ症候群、気管支喘息発作重積状態、慢性関節リウマチ、白血病などの、アレルギー性疾患、膠原病や悪性腫瘍などに広く用いられる。glucocorticoidの必要量は、抗体産生抑制作用は、抗炎症作用に比べれば多量のステロイドが必要である。

長期投与の場合は、有効最少量を使用する。副腎ステロイドを急に中止すると、①従来からあった疾患の症状が悪化する反跳現象(rebound phenomenon) 、②副腎皮質機能不全を起こす離脱症候群(withdrawal syndrome) が現れる。使用量を少しずつ減少させる漸減法(tapering) により、他の薬で置換するように工夫する。

withdrawal syndromeは、一日のステロイド分泌量をこえる量を長期使用していた場合(例えば2週間以上)に起きやすいと言われている。発熱、筋肉痛、関節痛、食欲不振、悪心、ショックなどを引き起こす。 

アンテドラッグ(antedrug):投与部位では活性を有し、体内に入ると速やかに代謝されて不活化するか、または活性が低くなる。全身的副作用を軽減する目的で開発された薬剤。プロドラッグとは逆の機構のもので、鼻アレルギー、気管支喘息などに使われ、副作用軽減の観点から重要である。

リファンピシン (抗結核薬)などのCYP3A4を誘導する薬剤との併用によって、ステロイドの代謝が亢進する。デキサメタゾンやベタメタゾンは特に影響を受け易いので、併用する場合はこれらのステロイドを増量する必要がある。。CYP3A4を誘導する薬剤としては他に、フェニトイン (抗てんかん薬)、フェノバルビタール (抗てんかん薬)、カルバマゼピン (抗てんかん薬)などがある。


4)グルココルチコイド(glucocorticoid)の副作用

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分類

薬物

作用点および副作用

抗リウマチ薬

 

作用発現に1~3ヶ月かかる。

 

免疫調節薬

1) ブシラミン(bucillamine)
2) サラゾスルファピリジン(salazosulfapyridine) 
3) 金チオリンゴ酸ナトリウム(sodium aurothiomalete)
4) オーラノフィン(auranofin)
5) D-ペニシラミン(D-penicillamine)

1) サプレッサ-T細胞比を増加させ、免疫グロブリンやリウマトイド因子活性を低下させる。D-penicillamineと作用は同じ。
2) T細胞、マクロファージに作用してサイトカインの産生の抑制。従来から潰瘍性大腸炎に使われていた。潰瘍性大腸炎に比べてRAでは少量で効果がある。メトトレキサートと並んで抗リウマチ薬の標準薬として使用されている。副作用:皮疹。
3) 金製剤、副作用:腎障害、間質性肺炎、口内炎、湿疹。
4) 金製剤
5) bucillamineとほぼ同じ作用。副作用:血液障害、腎障害、肝障害。

免疫抑制薬

1) メトトレキサート(methotrexate、MTX)
2) レフルノミド(leflunomide)
3) タクロリムス(tacrolimus)

1) DNA合成阻害により、リンパ急増直抑制。有効性が明確で、第一選択薬。生物学的製剤と併用される。副作用:過敏症、間質性肺炎、肝障害、腎障害。
2) ピリミジン合成酵素を阻害する。
3) カルシニューリン(calcineurin)の抑制

ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬

1) トファシチニブ(tofacitinib)
2) バリシチニブ(baricitinib)

1)JAK(1と3)阻害。JAK3を阻害することで、IL-2、15、17の抑制と樹状細胞の活性化、B細胞の抗体産生を抑制するとされる。適応はメトトレキサート (MTX) で効果不十分または効果が見られない 中等度から重度の関節リウマチ。
2)JAK(1と2)阻害。JAK3は阻害しない。JAK2に選択的に結合する事でGM-CSFIL-6IFNγの産生を抑制するとされている。

生物学的製剤

1) インフリキシマブ(infliximab)
2) エタネルセプト(etanercept
3) アダリムマブ(adalimumab)
4) トシリズマブ(tocilizumab)

炎症性サイトカインを抑制する効果発現が早く、RA病変が完全寛解することもある。分子量が大きく、経口投与できない。
1)TNFαを阻害するモノクローナル抗体、IL-6の産生抑制やTNFα産生細胞の傷害を引き起こす。副作用:結核、敗血症などの感染症、Infusion reaction、過敏症。
2) 可溶性TNFα受容体。TNFαの作用を阻害。
3) 完全ヒト抗TNFαモノクローナル抗体。TNFαの作用を阻害。
4) ヒト化抗IL-6受容体抗体。IL-6の作用を阻害。

ステロイド

プレドニゾロン(predonisolone)など

Steroidsの項目参照

NSAIDs

メロキシカム(meloxicam)
ロキソプロフェン(loxoprofen)
ジクロフェナク(diclofenac)

NSAIDsの項目参照

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誘導型iNOSによるNO産生とCOX-2によるプロスタグランジンの産生は、炎症反応の主経路である。炎症刺激による、iNOS合成とCOX-2合成の時間経過が類似しているので、2つの系の関連性を調べた。iNOSは特異的にCOX-2と結合し、これをS-ニトロシル化することにより、COX-2を活性化することが分かった。iNOSとCOX-2の特異的結合に関与する部位を明らかにした。2つの酵素の結合を特異的に妨害すると、NOによるCOX-2の活性化が阻害された。以上のことより、2つの炎症システムが相乗作用すること、これらの相互作用を抑える抗炎症薬の可能性を報告している。(F.K.Sangwon et al, Science, 310, 5756, 2005、論文をみる


関連サイトの紹介

1、日本緩和医療学会 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 薬理学的知識 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)
2、日本ペインクリニック学会 NSAIDsとアセトアミノフェン
3、メディカルノート アスピリン喘息(別名:NSAIDs過敏喘息/解熱鎮痛薬喘息)
4、大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学 ステロイドについ
5、全国膠原病友の会京都支部 ステロイド剤の基礎知識

(久野、三木)