1、副交感神経終末部(Cholinergic Synapse)
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作動薬(アゴニスト、agonists) | 遮断薬(アンタゴニスト、antagonists)抗ムスカリン薬 (antimuscarinic drugs) |
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ムスカリ受容体とニコチン | アトロピン(atropine、3級) |
ムスカリン受容体にのみ |
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a) ドネペジル(donepezil)
donepezilは、アリセプト®として、1999年に認可されたアルツハイマー型認知症治療薬である。Alzheimer病では、前脳基底野コリン作動性ニューロンの選択的変性がみられAch量が減少していることが知られている。そこで、脳内ACh量を増やすために、中枢cholinesteraseを選択的に阻害する薬が開発され、その中でも臨床効果の見られる薬物がdonepezilである。
Cholinesteraseの阻害活性は、IC50=6.7nMである。0.625mg/Kgよりラット脳AChを増加させる。0.5mg/Kgで、学習効果を改善した。臨床試験でも、認知機能検査で改善や症状の軽減が見られている。ただし、Donepezilは、Alzheimer病の進行は抑制しない。(小倉ら、日薬理誌、115, 45-51, 2000)
b) ガランタミン(galantamine)
アセチルコリンエステラーゼ阻害作用とニコチン受容体に対する増強作用がある。
c)メマンチン(memantine)
グルタミン酸受容体サブタイプの一つであるNMDA受容体拮抗作用を示す。作用機序は異なるが、他の薬物と同様、Alzheimer病の進行は抑制しない。
3)コリン作動および遮断薬の臨床応用
薬物の分類 | 疾患への適応 |
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ムスカリン作動薬 | 緑内障、手術後の腸管麻痺、尿閉 |
コリンエステラーゼ阻害薬 | 緑内障、手術後の腸管麻痺、尿閉、重症筋無力症の診断・治療、Alzheimer病 |
ムスカリン受容体遮断薬 | 鎮痙薬(消化管、胆管、尿路など)、胃・十二指腸潰瘍、散瞳薬、Parkinson病、麻酔前投与(気道分泌抑制など) |
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コリン薬あるいは抗コリン作用を有する薬剤は、中枢神経系へ作用し、有害事象として記銘力や注意力障害、せん妄等を起こすが、認知機能障害の発現には、個人の全身合併症や併用薬等の複数の要因が関連する。認知機能の低下には服. 用薬剤の総抗コリン負荷(total anticholinergic load)が重要とされ,コリン作用. 性有害事象のリスクを表す指標(Anticholinergic Risk Scale)が作成されている(下表)。3点の薬剤が抗コリン作用が強く、リスクが高い。
コリン作用. 性有害事象のリスクを表す指標(コリン作用性有害事象のリスクを表す指標(Anticholinergic Risk Scale)
コリン薬あるいは抗コリン作用を有する薬剤は、注意力障害、せん妄、尿閉、緑内障の悪化等など様々な有害事象を起こす。抗コリン作用の強さを点数化した抗コリン作用性有害事象を表す指標(Anticholinergic Risk Scale)があり(以下の表)、3点の薬剤が抗コリン作用が強くリスクが高い。認知機能の低下には、1剤ずつの抗コリン作用ではなく、服用薬剤の総抗コリン負荷(Total anticholinergic load)が重要視される。(福岡県薬剤師会 抗コリン作用を有する薬剤は、認知機能に影響を与えるか?より一部改変して引用)
3点 | アミトリプチリン、アトロピン製剤、イミプラミン、オキシブチニン、クロルフェニラミン、クロルプロマジン、シプロヘプタジン、ジフェンヒドラミン、チザニジン、ヒドロキシジン、ヒヨスチアミン製剤、フルフェナジン、プロメタジン、ペルフェナジン、メクリジン |
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2点 | アマンタジン、オランザピン、クロザピン、シメチジン、セチリジン、トリプロリジン、トルテロジン、ノルトリプチリン、バクロフェン、プロクロルペラジン、ロペラミド、ロラタジン |
1点 | エンタカポン、カルビドパ・レボドパ、クエチアピン、セレギリン、トラゾドン、ハロペリドール、パロキセチン、プラミペキソール、ミルタザピン、メトカルバモール、メトクロプラミド、ラニチジン、リスペリドン |
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