中枢神経刺激薬(Central Nervous System Stimulants)
1、薬物
作用部位による分類 | 薬物 |
---|---|
精神機能興奮薬 | キサンチン(xanthines) |
中枢性交感神経作動薬 | エフェドリン(ephedrine), アンフェタミン(amphetamine), メタンフェタミン(methamphetamine), コカイン(cocaine) |
痙攣誘発薬 | ピクロトキシン(picrotoxin),ペンテトラゾール(pentetrazol), ストリキニーネ(strychnine) |
呼吸促進薬 | nikethamide, ジモルホラミン(dimorpholamine) |
精神異常誘発薬 | LSD, シロシビン(psilocybin), テトラヒドロカンナビノール(tetrahydrocannabinol) |
1)キサンチン(xanthine)誘導体
a)カフェイン(caffeine)(コーヒに多い)
b)テオフィリン(theophylline)(茶に多い):気管支喘息の治療薬
c)テオブロミン(theobromine)(ココアに多い)
d)アミノフィリン(aminophylline) (theophylline + ethylenediamine):気管支喘息の治療薬
薬理作用 | 作用の強さ | 特徴 |
---|---|---|
中枢神経の興奮 | caffe>theop>>theob | 精神機能亢進、知覚亢進、眠気や疲労感の減少 |
利尿作用 | caffe>theop>>theob | 心筋の収縮による間接的な利尿 |
心筋興奮作用 | theop>theob>caffe | 心収縮の増強 |
平滑筋弛緩作用 | theop>theob>caffe | 気管支、冠血管の拡張 |
骨格筋興奮作用 | caffe>theop>theob | 筋小胞体からのCaの遊離促進 |
胃酸分泌促進 | - | cAMPの増加による胃酸分泌増 |
theophylline caffeine
テオフィリン(theophylline)
カフェイン(caffeine)
2)キサンチン類(xanthines)の作用機序
cAMP ホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase)の阻害により、細胞内cAMP量の増加により平滑筋の弛緩や心筋の収縮を引き起こす。もう一つの可能性として、アデノシン(adenosine)受容体(P1)を阻害し、アデニル酸シクラーゼ(adenylate cyclase)の脱阻害によりcAMP産生を増加させる。
2、痙攣誘発薬の作用機序
ピクロトキシン(picrotoxin)は、GAGAニューロンによるシナプス前抑制を遮断することにより痙攣を引き起こす。ストリキニーネ(strychinine)は、グリシン(glycine)ニューロン(Renshaw細胞)によるシナプス後抑制を遮断することにより、痙攣を引き起こす。 |
話題
Caffeineによる中枢興奮作用(運動亢進)は、adenosine A2a受容体の抑制によることが知られている。DARPP-32(dopamine- and cAMP-regulated phosphoprotein, 32kDa)のノックアウトマウスでは、caffeineによる運動亢進が減少していることが観察された。この時、PP-2A(phosphatase)の阻害により、DARPP-32のリン酸化(Thr-75)の増加が見られた。このことより、caffeineの中枢興奮作用には、DARPP-32のリン酸化と脱リン酸化が関係していることが示唆された。(M.Lindskog et al., Nature, 418, 774, 2002、論文をみる)
オーストラリアのGeorge研究所のSharwoodらは、長距離ドライバーで、1年以内に事故を起こしたグループ530名と、無事故グループ517名について、カフェイン(caffeine)含有飲料の摂取と衝突事故との関連性を調べた。カフェイン(caffeine)含有飲料を摂取したドライバーは、摂取しなったドライバーに比べて衝突事故が63%減少していた。このことより、カフェイン(caffeine)を含む飲料は、運転中の注意を維持するのに役立つ方法であると結論された。(L.N.Sharwood et al, Brit. J. Med, 346, f1140, 2013、論文をみる)
関連サイトの紹介
1、脳科学辞典 カフェイン 覚せい剤
2、赤城高原ホスピタル 覚せい剤
(三木、久野、向井)